素人庖丁記/素人庖丁記・ごはんの力

■「素人庖丁記」「素人庖丁記・ごはんの力」嵐山 光三郎(著)
文人悪食」にいたく感動し、
氏の著作を読んでみたくなり購入した二冊。
「ごはんの力」を先に買ったのだが、
読み終わらないうちに古本屋で「素人庖丁記」を発見、
ならば、と初代の方から読んでいってみた。
結論から書くと、過去に読んだ食エッセイの中で
一番面白かった(少なくとも初代は)。
もう最高である。
何が最高って、読んだ事のない文章なのだ。
おそらくは「だ。」「である。」と言い切る文体のせいだろうが、
もうものすごい説得力。
呑み込まれる様に、夢中になって読んでしまう。
あまりにも一気に読んでしまったので、
このレビューを書くためにもう一度読み返してみた。
まず、一編はおよそ 10 ページで構成されているのだが、
その中にネタがおよそ 15 個ぐらい入っている。
これはかなり多い。
自然、1 ネタにかける文字数は少なくなるのだが、
決して説明不足な感じはしないし
さっきも言った通り、文体の説得力のせいで、
ちゃんとお腹に溜まる。
個々のネタは基本的に大きな括りからさほど逸脱しないから、
大きな括りとしての題材は
いろいろな視点から色濃く語られたように感じられる。
例えて言えば、
「非常に脱線好きな教授の、
しかし振り返ってみれば素晴らしかった授業」のようで
もう本当に手放しに素晴らしい。
ネタを数えてみると、この本が
取材やメモ、覚え書きの羅列から構成されているのがわかってくる。
しかし、それらの紡ぎ方がたいへん上手いので、
とても読み応えがあるように感じられるのだ。
「ごはんの力」はちょっと軽薄である。初代の方が断然面白い。
初代から読む事をお薦めする。
ちなみに、氏の話はどこまでホラなのか、非常にわかりにくい。
それもまた魅力なんである。