あやしい探検隊 バリ島横恋慕

■「あやしい探検隊 バリ島横恋慕」椎名 誠(著)
あやしい探検隊シリーズという事で、中も見ずに買った一冊。
シリーズに惚れ抜いている、というわけでもないのだけれど
暇つぶしとしては僕的に安全パイであるし、
古本屋の格安コーナーでの買い物であるから
楽しめる一節があったらラッキー、程度の気楽な購入である。
この本が書かれたのは 1998 年、
椎名氏がバリを訪れたのはその一年前の 1997 年らしい。
実は僕もバリに行った事がある。2001 年の 10 月の事だ。
当時、バリはブームの真っ只中にあった。
旅行会社の組んだ安いツアーで行ったのだが、
滞在中はずっとフリータイムのプランだったから
かなり歩き回った、つもりである。
とはいえ言葉も通じないし地理にも疎いので
ツアーの観光客がちょこちょこ散歩した程度に過ぎない。
アジアの片田舎といった風景は確かに叙情的であったが
ビーチには三つ編みやマニキュアの客引きが居付いていて
とてものんびりするムードではなかったし、
ブームに合わせてバリ風雑貨などが豊富に売られる町の商業地域は
町並みこそ有機的な造りになっているもののネットカフェなどもちゃんとあり、
僕としては牧歌的なリラクゼーションリゾートといったイメージよりも、
アジア人特有のしたたかさみたいな物を感じた場所であった。
さて、僕のそんな印象とこの本に描かれるバリは
違う国の話かと思うほどに違っている。
4年間という時間の経過を踏まえても
バリがそんなに急変するわけもないからそれはつまり、
僕が行ったバリの観光中心部と、
椎名氏ら一行が訪れたオリジナルバリが
まったく違うものだという事なのだろう。
持つ者と持たざる者の事情の違い、なのであるが
この本で書かれたような、一種オーダーメイドのような旅をするのは
普通の観光客には到底無理というものだ。
そんな、手の届かない世界をまざまざと見せ付けられた時に
「すごいなぁ」「いいもんだなぁ」と感嘆してみせるのが
一般的な紀行文の読み方なのであろうが、
事それがあやしい探検隊シリーズとなると
どうもなんだかダマくらかされたような気分になって
素直に受け止める事ができないのである。
もっとダサくてユルいのが、あやしい探検隊ではないのかと。
という僕は、あやしい探検隊(東ケト会)を語れるほど
イッパシのファンというわけではないのだが。
なんかみんな商売してしまっているのだ。
描かれている各人の考え、気持ちが、
自然に湧き上がってきてるものではなくて
仕事として絞り出されたもののように感じるのだ。
仕事だから任務遂行しよう、終わらせようって雰囲気を、
非常に強く感じてしまう。
この本が、書かれるまでに時間がかかってしまったからだろうか。
ちょっと、義務感漂う一冊であった。