遺品の一部の整理

生活が落ち着いてきたので、
親父の遺品の整理のうち、後回しにしていた、
宝飾品+αの処分に手を付け始めた。
まずは親父の道楽の一つだったらしい、記念硬貨と記念メダルから。
保管の無雑作っぷりからして、本線の趣味ではなかったと思う。
集め方に脈絡がないし、コイン収集の本などで勉強した形跡もないし。
そういう点では、処分するにあたって良心の呵責がなくてありがたい。
あったのは(昭和天皇)御在位五十年記念硬貨とか六十年記念硬貨とか
皇太子殿下御成婚記念硬貨とか、
青函トンネル開通記念硬貨とか、沖縄復帰ニ十年記念硬貨、瀬戸大橋開通記念硬貨
長野五輪、花博、つくば博、広島アジア競技大会などの記念硬貨
及び、額面記載のない(流通貨幣ではない)
ポートピア博や花博やユニバーシアード神戸大会のメダル的なものたち。
手に入るものを手に入れた、というふうで、
プレミア感のあるものは少ない。
状態は、特に硬貨において、到底良いとはいえない物ばかりで、
額面以上の価値はないだろうなあ、と薄々感じたので
インターネットでその価値を一つ一つ検索してみる。
結果はどれも、完全未使用(手で触ってもいないような)のものなら
額面よりわずかに上乗せがあるくらいで、
うちにあるような、状態が良くないものは額面以上の価値はなく、
「コイン専門店に持っていくのも憚られる」ということだった。
どれも、発行枚数がめちゃくちゃ多いのである。
だから、希少価値がまったくないのだ。
逆に言えば、そういう入手しやすいものだから
親父程度が入手していたとも言える。
買い取りをしているコイン専門店も既にいくつかピックアップしていたが、
そういうわけなので「額面記載のある貨幣」はコイン専門店に持っていくのはやめて、
金融業者・つまり銀行に持っていくことにした。
平日の昼間、昼食のついでに
オフィス街にある某都市銀行に持っていった。
取り引きとしては「両替」になるらしい。
両替の伝票(一般的なもの)を書いて窓口に出し、しばし待つ。
全部で合計14枚だったのだが
はたして査定?に少し時間がかかり、呼ばれたのは15分後ぐらいだった。
同等の金額の現行貨幣を渡され、記念硬貨の処分は終わり。
あっけないといえばあっけないが、
これ以上ないというぐらい規定に沿った処分なわけで
感慨もないかわりに悔いもない。

次は似た類の記念メダルかと思ったが、
どうも記念メダルというものは、メダルであることの価値はありそうになく、
地金としての処分になりそうなので、
他の貴金属と一緒に処分することにする。

さて、遺品の中で、宝飾品はそのほとんどが真珠である。
親父自身が真珠メーカー勤務だったので当たり前すぎるほど当たり前なのだが、
この真珠というのが、譲渡での価値が薄い品物らしいのだ。
なにせ、買取りをしてくれる業者そのものが少ない。
また、買取り金額もたいへんガッカリ感の強い、ションボリなもののようだ。
ちなみに、ミキモトや田崎の鑑定書が付いているとそこそこいいらしいのだが、
うちにあるものは──お袋の所有品はともかく、親父の所有だったものは──
鑑定書なんて付いていない。
内容としても、タイピンやカフスボタンが多く、
普段スーツを着ない僕から見ても、
今どきは需要がないのではないかと思うようなものばかりだ。
まぁそれでも、台座に貴金属が使われているものもあるし、
とりあえず買取り業者に持っていってみることにする。
本来なら複数の業者に見積りをさせて、
高いところに売るべきなのだが、
真珠の場合はその手間が利益に結びつきそうにないので
ネットで検索して出てきた中から、
良さそうなところを一つ選んで行ってみることにした。
店名がちょっとDQN向けのダサい感じなのだが
まぁしょうがあるまい。
…行ってきた。
銀座の店だったのだが、
ダサい名前の割りにはまぁちゃんとしてたと思う。
店内のBGMは水商売の女性が好きそうなやつだったが。
結論からいうと、
その店はHPで真珠買取りを謳っているにも関わらず、
真珠に値段は付けなかった。
だから、持っていったうちのほとんどに、
値段が付かないという査定だった。
わずかに3点ほどが、台座のWGやメレダイヤについて
評価されただけだった。
おそらくは、真珠買取りを謳う目的も、真珠以外の部分にあるのだろう。
HPの記載は虚偽ということになるが、
あまり腹は立たなかった。
金額については、ちゃんと店の規定通りの金額を提示されたと思う。
地金の価格と重量を掛け合わせれば、
それほどひどい感じはしなかった。
なので、評価額の付いた3点は買取ってもらってきた。
値段の付かないものたちは持ち帰り。
持って帰ってきた残りのパールアクセサリーたちは、
地元の質屋にでも持っていってみようかと思う。

それにしても。
永くメーカー会社に奉仕してきた親父を尊敬はしているが、
やっぱり真珠は「消耗品」だ。「財産」ではない。
換金性が低すぎる、もしくは「ない」からだ
(これはたぶん宝石(貴石・半貴石)でもそうなんだろうけど
真珠は殊にひどい。まぁ、宝石が生成されるプロセスに比べたら
真珠の誕生なんて一瞬なので、希少性も比例するのだろうけれど)。
財産になりにくい理由としては、
真珠は劣化が早い、痛みやすい、保管が難しい、などがあろう。
人気がない理由として
使用するシーンが少ない、とも言われるがそれはないと思う。
どちらかというと、使えるシーンで使うには耐久性が無さ過ぎる、というか。
真珠は、(イミテーションも含め)品質の良し悪しが
あまりはっきりわからない、というのもあるだろう。
本物を知る人は「全然違う」と憤慨するかもしれないが、
実際には他者が装着者に、品質が判別できるところまで近寄って見ることは
あまりないだろうし、
「どういう真珠が"良いもの"なのか」なんて普通の人たちは知らないし。
僕は真珠については肯定的なほうだけど、
でもやはり真珠は、自分のために
気に入ったものを最小限、手に入れるのが一番いいと思う。

閑話休題
真珠買取り業者で引き取ってもらえなかったものを、
地元の質屋に持っていってみた。
結果として、値段は付かなかった。
真珠のタイピンやカフスボタンは、
段ボール箱に山盛り在庫があるんだそうな。
だが需要がないのでこれ以上は引き取れない、とのこと。
謙虚に納得して帰ってきた。

さて次に、真珠以外のアクセサリーを売りに行くことにする。
ネットで調べたそこは、田中貴金属よりも金の買取り価格が高い。
また、銀の買取りも行っているから手間がなくていい。
各地に支店があるようだが、僕は新宿店に行ってみた。
ここに持っていったものたちはK24やK18も多く、
だから何も得るものがない、なんて事にはならないだろうと思っていた。
果たして、目星を付けたものはそれなりに買取ってもらえたようだ。
他店で断られることもあるという金フレームの眼鏡も
HPでの表記通り買取ってもらえた。
だが、一部のメダルの「銅製品」をはじめとして
質の低い銀(「SILVER」表記や「STERLING SILVER」表記のもの)は
買取れないとのことだった。
そんなわけで、想定以上の結果(金額ではなく、引き取ってもらえるかどうかにおいて)
だったので、たいへん充実した気持ちになりながら帰ってきた。
そうそう、この店もやはりBGMが泣きの入った男性J-POPだった。

今の時点でいくつかの真珠のアクセサリー(紳士もの)と
純度の低い(?)銀製品が手元にまだ残っている。
これを今度は地元の大手チェーンのリサイクルショップに持っていくことにする。
10円とか50円とか言われるのが目に見えているので、
残っている中から、小粒だがとてもいい真珠のタイピンだけは
手元に置いておくことにした。

で、リサイクルショップに持って行ってみた。
ほとんどのアクセサリーは値段が付かない、とのことだった。
わずかに、マベパールの大ぶりなループタイだけが「10円」になった。
わかっていたことだが、切ない結果である。
値段の付かなかったものも、結局リサイクルショップに置いてきたので
これで遺品の整理は終了である。