頭文字D THE MOVIE

■「頭文字D THE MOVIE」を見た。
感想を先に書くが、とっても面白かった。
ところが(いつもの)Amazon
カスタマーレビューでは、低い評価が結構多い。
僕は「イニD」のコミックスを持っているから
この映画がかなりの部分で
アレンジを加えているのももちろんわかっている。
そのうえでなお、面白いと思ったのだが、
Amazonで怒っている人が何で怒っているのかも
実はそこそこわかっているつもりだ。
「イニD」という漫画は、美少年キャラ漫画の側面を持っている。
アニメ化で火が付いたように思うが、
僕はアニメ版は通算で10分ぐらいしか見ていない、
というぐらいに興味がなかったので、あまりはっきりとはわからない。
たぶん漫画の原作者もその辺の人気は計算に入れて描いていると思うが
その客層、そのニーズにこの映画は応えておらず、
だからあんなに不満が噴出しているんだろうと思う
(そのごく一部には、真剣に映画としての酷評を
なさっている方もいるかもしれないが)。
実写化の憂き目といえば、僕にとっては「あずみ」である。
あれにはそうとう腹を立てた。
なのにこの「イニD」に対しておおらかなのは
自分勝手なのではないかと考えたので、ちょっと分析してみたい。
まず、「イニD」においてキャラ萌えの要素は
副次的な楽しみである。
主役はハチロクだからだ。
イツキの態度がデカかろうが文太がやさぐれていようが
弱いものが強いものに勝つという一番のキモには関係がない。
また、車が疾走するスピード感、ドリフトという非現実感も
コミックス同様楽しむ事が出来る。
しかも技術の進歩もあって、カーアクションは贅沢だ。
公道バトル物に限らず、007に至るまで
映画のカーアクション(カーチェイスも含む)は
お粗末…とは言わないが、車の運転や挙動が好きな者にとっては
何か満たされない物ばかりだったのではないだろうか。
無茶な追いかけっこは無茶なだけであり、
赤信号を突っ切ろうがチキンレースをしようが
スタントマンが、せーのでうまくやってるんでしょといった、
どこか冷めた見方をしてしまうのは仕方のない事だったが
この「イニD」はハイテクニックな運転を
本当にやって見せてくれているところがすばらしい。
用意されたステージとか関係ないのだ。
いわば、ゴージャスな土屋圭一のドリフトビデオとでも言おうか、
まさに見たいのはそこなんですという感じだ。
漫画を読んで、「まぁでも漫画だし」と一歩引いてたところを
実際にやってみせてくれたんだから気が晴れる。
ドリフト走行が有効かどうかはどうでもいい。
バードアイでギャラリーし続けられた事が面白かったのだ。
間違っているだろうか。
そう間違っている。
この映画には、他には何もないからだ。
例えば同じ痛快カーアクションの「TAXI」と較べれば、
いくつかのエピソードの紡ぎかたは話にならないほど低レベルだし
舞台となった国の文化の描き方も
「イニD」においては軽視している。
要するに映画としては成り立っていないのだ。
車好きのためのビジュアルクリップである。
正直言って、映画鑑賞料金を払う価値はない。
しかしレンタルDVD料金の価値はあるし、
一部の客層にとっては、映画鑑賞料金を上回る、
ソフト購入をする価値もある作品であろう。
しかし車の照明は難しそうだな。
いくつかのシーンで模型に見えてしまう。
パンダ色のせいもかなりあると思うけど。